ガラスびんの魅力探訪
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Vol.発行年月日テーマ▶▼
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112016.11.25ブラジル生まれの北海道育ちの炭酸飲料:「コアップ・ガラナ」
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102016.8.24きつ〜い炭酸の懐かしい味が大人気:「ありまサイダー てっぽう水」
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92016.6.28北海道の野菜にイタリアのバルサミコ酢を!:「北海道キャロット・ラぺ/北海道ベジ・マリネ」
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82015.10.15何げないびんに魅せられて:庄司 太一 氏
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72015.10.8ものがたりをデザインする:三石 博 氏
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62015.9.24新感覚のスパークリング清酒:「澪」
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52015.9.10さらなる特別感と個性を大切にしたビール:「グランドキリン」
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42015.6.29「コカ・コーラ」ボトル生誕100周年:「コカ・コーラ」
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32015.6.29竹鶴政孝の想いが込められたウイスキー:「スーパーニッカ」
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22015.6.29日本にこだわり続けるウイスキー:「響」
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12015.4.1文化とつながっているガラスびん:林 周二 氏
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日本にこだわり続けるウイスキー
「日本最高峰のブレンデッドウイスキーを作ろう」というコンセプトで
サントリーウイスキー「響」は誕生しました。
サントリーの創業90周年を記念して、1989年にサントリーウイスキー「響」は誕生しました。発売の2年前くらいから開発がスタートしており、当初は、はっきりとしたコンセプトがないまま進められました。ネーミングも英文あり和文ありという感じでアイデアを出し合い、プレゼンテーションを繰り返しブラッシュアップしていく中で、「日本最高峰のブレンデッドウイスキーを作ろう」という明確なコンセプトが打ち出され、日本にこだわったウイスキーの開発に力が注がれました。
ネーミングについては、実は「響」ではない案に決まっていたのです。しかし、創業90周年の企業理念の作成を進めている中で、「人と自然に響きあう」というミッションが決まり、「響」に差し替えました。急遽ラベルのデザインもやり直しました。「響」の書は、書家の荻野丹雪氏によるもので、凛とした佇まいで「響」にふさわしい趣をたたえています。
ボトルの24面カットは、24時間、24節気といった時を表現しています。
ウイスキーは時間が作るもので、大切なコンセプトなのです。
ボトルのデザインはとても大事な仕事でしたので、デザイン部のほとんどの先輩たちは、商品開発がスタートすると同時に「響」のデザインを進めていました。結局、たくさんのデザインの中から、コンセプトに合うものとして24面カットのボトルが選ばれました。この24面カットの24という数字には、1日24時間、1年24節気という意味合いがあり、日本の四季を幾度も繰り返し、長い時間をかけて熟成した「響」の時を表現しています。ウイスキーにとって、時間は本当に大事なコンセプトです。ブレンデッドウイスキーというのは、酒齢の高いものから個性あるものまで、長い時間をかけて熟成していくもので、まさに時間が作ってくれるものなのです。
24面カットのボトルを開発する際、最初のプロトタイプはクリスタルで作ったのですが、底部の厚みや美しいカット面を自動製びん機で再現するには、かなりの技術が必要だったと思います。
ラベルについても、日本にこだわって手漉き和紙を使用しています。和紙デザイナーの堀木エリ子氏のプロデュースによるもので、和紙を一枚一枚手でちぎって質感をだしました。それを工場で貼ってもらえた時には本当に感動しました。手でちぎっていますから、一枚一枚微妙に雰囲気が違うのです。これもこだわりですね。
海外の方々に向けて、免税店用に日本の意匠をまとった「響」を開発。
24面カットに細かい絵柄を表現するために苦労を重ねました。
「響」はずっと日本をテーマに商品開発を進めてきており、九谷焼や有田焼のボトルも作っています。これはある意味日本の文化を継いで行くことが「響」にできることではないだろうか、という考えから来ています。
日本ガラスびん協会主催のガラスびんアワード2012では、「響17年意匠ボトル〈白鷺〉」がデザイン優秀賞をいただきましたが、これは海外の方々に向けて免税店用に開発したものです。屏風絵や蒔絵は日本古来のグラフィックデザインとして世界の中でも魅力的な表現方法なので、それをガラスびんに印刷するというのも一つの文化表現だと思っています。2013年に出した「響21年意匠ボトル〈富士風雲図〉」もその流れですが、赤富士の繊細なグラデーションを表現するために、こちらは転写の技術を使いました。一枚一枚手で貼ったものを焼き付けており、非常に難しかったと思います。その甲斐あって、海外の方々にはとても喜んでいただいております。皆さん富士山が好きですからね。
〈富士風雲図〉」
日本のガラスびんの安全性は世界で一番!
この技術力をもっと海外に向けてアピールしてほしいと思います。
バブルがはじけた頃からコストが優先され、なかなか個性的な新しいびんを作れない時代が長く続いたようですが、景気も良くなってきて、日本の優れたガラスびん製造の技術を発揮できる状況になってきたように思います。日本の美しいものを求める海外のお客様も増えてきていますから、日本の技術を最大限に使って、他の国にはできない美しいプレミアムなボトルを、ガラスびんメーカー各社に作ってほしいですね。また日本のガラスびんの安全性は世界で一番だと思っています。精度が高くばらつきがありません。中身を詰めていく上で、非常に安心感があります。この技術力は海外に誇れるものですから、もっとアピールしてほしいと思います。ガラスびんと言ったら日本!と言われるようになってほしいですね。
〈富士風雲図〉」