ガラスびん3R促進協議会
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ガラスびんの魅力探訪

ものがたりをデザインする

パッケージデザイナー
三石 博 氏

一流デザイナーの下で使い走りのような仕事をすることにより、
ボトルデザインから製品化まで全てを覚えることができました。

 美大でグラフィックデザインを専攻していたのですが、卒業後、就職した印刷会社でたまたま配属されたのがパッケージの部門でした。当時、日本ではまだパッケージデザインがあまり注目される状況ではなく、海外のデザインを吸収しているような時代でした。

 転機が訪れたのは、入社して3年ほど経った頃、上司に連れられて伺ったパッケージデザイナーの鹿目尚志さんとの出会いでした。結局、鹿目さんとクライアントの間の使い走りのような仕事をすることになり、ガラスびんのことをまったくわからなかったのですが、そこでの経験はボトルデザイナーとしてキャリアを築く決定的な1年半となりました。ダミーの作り方やプロダクトに落とし込むための図面の描き方も、そこで覚えました。デザイン制作から製品化に向けてガラスびんメーカーとの詳細な打ち合わせまで、鹿目さんの下での経験は、その後ボトルデザイナーとして歩んでいくための準備期間だったように思います。

日本の焼酎の向こうに世界が見える「神の河」のボトル。
「ヌーベル月桂冠純米吟醸」のボトルのこだわりはフォルムと色調。

 ボトルデザイナーとしての原点は、薩摩酒造株式会社の「神の河」にあると思っています。かなり無理のあるデザインをやったように思うのですが、とても個性的なボトルに仕上がりました。「神の河」は麦焼酎ですが、焼酎をはじめとして、蒸留酒を蒸留するためには蒸留器が必要です。その蒸留器は、一説によると紀元前3000年頃のメソポタミア文明で発明されたとされています。焼酎は世界の蒸留酒の仲間です。まさに日本の焼酎の向こうに世界が見える。そんな想いが「神の河」のボトルには込められています。

 また、日本ガラスびん協会主催の「ガラスびんアワード2014」で最優秀賞をいただいた月桂冠株式会社の「ヌーベル月桂冠 純米吟醸」ですが、2001年に登場した「ヌーベル月桂冠」をさらに進化させたボトルです。こだわったのは色と形。江戸時代の流行色である璃寛茶(りかんちゃ)を使用し、磁器徳利の持つ柔らかな美しい形をガラスで表現しました。

 このようにして「神の河」や「ヌーベル月桂冠」などのボトルデザインを手掛けてきて26年、自分のモノづくりの考え方を一冊の本にまとめました。それが「ボトルは語る ものがたりをデザインする」です。数々のボトルデザインが、どのようにして生まれたかを語らせていただいています。

▲薩摩酒造株式会社「神の河」
▲月桂冠株式会社「ヌーベル月桂冠純米吟醸」

一番大事なのは、ブランドを築き上げて商品を継続させること。
技術が前面に出ない、自然に見て美しいガラスびんを作りたい。

 ボトルをデザインする上で大切なことは、オリジナリティとか魅力を感じさせることだと思います。まず作れるとか作れないというところから入ると、大事なことを見失ってしまいます。一番大事なことは、しっかりブランドを築き上げて、その商品を10年20年と継続させることだと思っています。

 ガラスびんを製造する技術は進化していて、特に日本の技術は進んでいると思うのですが、その技術がボトルデザインの前面に出てこないほうがいいように思います。こだわりのある形状や色調にするための難しい技術を説明しようとするデザインより、自然に見て美しいデザインがいい。そんなガラスびんを作りたいと思います。ガラスびんにはいくらでも可能性があると思います。デザイナーも製びんメーカーも、みんなで考えて、本当にいい物を作っていきたい。包材の中でガラスびんほど魅力あるものは、他にはありません。特に大量生産のびんに魅力を感じます。デザインは素晴らしいけどすぐになくなってしまうびんより、やはり長く愛される美しいびんがいいですね。

▲「ボトルは語る ものがたりをデザインする」六耀社
パッケージデザイナー
三石 博 氏
▲薩摩酒造株式会社「神の河」
▲月桂冠株式会社「ヌーベル月桂冠純米吟醸」
▲「ボトルは語る ものがたりをデザインする」
六耀社